子どもの手汗｜手掌多汗症とは？原因や症状・注意点や解決法を解説

子どもの手汗・手掌多汗症

まずは子どもの手掌多汗症について、発症の時期やチェック方法を解説します。「もしかして手掌多汗症かも」と思った方はご確認ください。

手掌多汗症とは？

手掌多汗症とは、精神的な緊張により手のひらに大量の汗をかく病気です。日本における手掌多汗症の患者数は約493.1万人と言われています。

手汗が多いことで電子機器やテスト用紙が汗で濡れる、握手ができないなど日常生活に支障をきたします。手汗がお子さんのコンプレックスを引き起こすこともありますので、もしお子さんが手汗に悩んでいる場合は早めに適切な対策を行いましょう。

何歳から発症する？

早くて小学校に入学する時期、遅くとも25歳までに最初の症状が見られます。手掌多汗症は多汗症の中でも発症時期が比較的早く、発症平均年齢は13.8歳と言われています。

小さい子どもの手汗のチェック方法

小さい子どもの手汗をチェックする方法として、次の点に注意すると良いでしょう。

思春期子どもの多汗症の特徴

手掌多汗症は思春期に発症することが多い病気です。手汗が思春期の子どもにとってデリケートな悩みになることも少なくありません。具体例として、次のようなトラブルが挙げられます。

• 手汗が気になりスキンシップができない
• プリントやテキストが手汗で濡れてしまう
• 汗ジミやにおいをから、かわれることが心配
• 手汗で手が滑るために、部活や体育でパフォーマンスが低下する
• 人目が気になり、対人関係に消極的になる

学校での集団生活を送ること、デリケートな年頃であることから、手汗がお子さんにとって深刻な悩みを引き起こす場合もあります。

手掌多汗症の原因と症状

手掌多汗症の原因と症状について解説します。

手掌多汗症と遺伝について

手掌多汗症の患者の内、一部は遺伝子も背景にあると考えられていますが、手掌多汗症が遺伝性のものかどうかはまだわかっていません。家族も手掌多汗症を発症している場合もあれば、家族で一人だけ手掌多汗症を発症している場合もあります。

手掌多汗症の原因

発汗に関わる交感神経が働き過ぎていることで手掌多汗症を発症すると考えられていますが、明確な原因は未だ特定されていません。

多汗症は特に原因のない原発性（特発性）と、他の疾患に合併して起こる続発性に分けられます。他の疾患にかかっていないようであれば、原発性の手掌多汗症と考えて良いでしょう。

手掌多汗症の症状

手掌多汗症の患者は、精神的緊張により手のひらに大量の汗をかき、重症例では滴り落ちる程の汗が見られます。汗の気化熱や血管の収縮により手は湿っていて冷たく、皮膚の色が紫がかって見えることもあります。特に汗をかきやすいのは緊張した時、物を持つ時です。

症状は手汗に限りません。汗で長時間湿った皮膚は荒れてしまい、皮膚が剥けたり細菌・カビの感染源になりやすいことがわかっています。手汗だけでなく皮膚の状態にも注意しましょう。

特に日中は汗をかきやすく、逆に夜は汗が少ない傾向があります。季節によっても汗のかきやすさは異なり、夏は汗をかきやすく冬は汗をかきにくいです。

子どもの手掌多汗症の解決策

子どもの手掌多汗症は病院で診断、治療を受けられます。手掌多汗症を改善するためにどのような方法があるのか解説します。

手掌多汗症の診断と治療法

ガイドラインによると、次の6症状の内、2症状以上に当てはまる方は多汗症と診断されます。

• 最初に症状が出るのが 25 歳以下であること
• 対称性に発汗が見られること
• 睡眠中は発汗が止まっていること
• 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
• 家族歴が見られること
• それらによって日常生活に支障をきたすこと

また、重症度は次の4段階に分けられます。

1. 発汗はまったく気にならず、日常生活にまったく支障がない
2. 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
4. 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

3,4が重症の指標とされます。

病院における手掌多汗症の治療法として、次の方法が挙げられます。

治療法	保険適用	特徴
局所制汗剤（塩化アルミニウム製剤）	保険適用外	塩化アルミニウムを患部に使用する 手掌多汗症の治療法として第一選択 症状に応じて濃度や塗り方を工夫する
水道水イオントフォレーシス	保険適用	手のひらを水道水の入った容器に浸して電流を流す方法 1回30分間の通電を週に1回、8～12回行うと汗の量が減ってくるが、治療効果を維持するためにはその後も1週間に1～2回行った方が良いとされる 一部の医療機関で行われている
ボツリヌス毒素製剤（ボトックス注射）	保険適用外	汗をかきやすい場所に直接注射する 交感神経から発汗の指令を出す物質（アセチルコリン）の放出を抑える 腋の多汗症に対してのみ保険適用となっている
アポハイドローション（外用薬）	保険適用	手掌多汗症に対して保険適用となる唯一の医薬品 寝る前に手のひらへ薬を塗る アセチルコリンの放出を抑える
経口抗コリン薬	保険適用外	飲み薬 アセチルコリンの放出を抑える 口の渇きや眠気、便秘が現れることがある
交感神経遮断術（ETS）	保険適用	手汗の原因である交感神経の神経の節を切除する、または焼く手術 重症、保存的治療で効果が見られず、患者本人の強い希望がある場合に限られる

日常でできる解消法

日常生活における汗対策として、次のような方法があります。物理的に汗を抑える他、生活習慣を見直して自律神経を整えることも重要です。

日常生活の工夫で手汗が改善しない場合は、病院の治療が有効な場合もありますので、医療機関へご相談ください。

子どもの多汗症は保護者の支えも必要

の子どもにとって、手汗はデリケートな悩みにつながります。放っておくと成長とともにコンプレックスやトラブルとなり、性格にも影響するかもしれません。

ときには保護者の精神的なサポートが必要になることも。お子さんが充実した生活を送れるよう、適切な対策や治療を継続的に行いましょう。

子どもが運動する時の手汗も注意

手汗が多いと普段の生活だけでなく、授業や部活動でスポーツをする時も支障をきたします。手汗で道具をつかみにくいと感じたり、投げたボールが滑ったりして十分にパフォーマンスが発揮できない可能性も考えられます。

対策として日常生活に気をつける他、スポーツをする時もケアしておくと良いでしょう。手軽なケアとしてチョークレスの使用もおすすめです。チョークレスは手に擦り込むことで皮脂を吸収し、水分を弾いて手汗による滑りを防ぎます。ベタつかずせっけんで落とせるので、お子さんでも使いやすいアイテムです。

人によっては大人になっても手汗対策が必要になることもあるので、手汗と上手に付き合えるよう日頃から対策を心がけましょう。

まとめ

今回は子どもの手掌多汗症について解説しました。

お子さんの手汗は日常生活で困りごとを起こし、コンプレックスにもつながる可能性があります。お子さんが手汗に困っている場合や、保護者から見てお子さんの手汗が明らかに多い場合は早めに対策をしましょう。

日常生活ではハンカチや制汗剤を使う他、スポーツをする時は汗で手が滑らないようチョークレスを使うと便利です。日常のケアで改善できない場合、医療機関で治療を受ける選択肢もあります。お子さんの悩みに応じて、必要なケアを選びましょう。

＜参考文献＞
Fujimoto T, et al.: J Dermatol 2013; 40(11): 886-90
研究 多汗症｜北里大学病院 呼吸器外科
原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版
多汗症｜慶応義塾大学病院
Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: from questionnaire analysis
汗で困っていませんか？多汗症の話｜久光製薬